満15歳以上で遺言能力を有する国民の権利です。
ですから満15歳未満であったりして遺言能力を欠く者に対しては認められていません。
これは権利を害する目的ではなく、判断能力のない本人の権利を守るために設けられています。あくまでも「相続」の一部ですから、
例えば
「家族仲良く力を合わせ一家の繁栄につくさなければならない」
などといった訓示的内容は効力がありません。(書いたから遺言の内容がすべて無効になるというわけではありませんが)
また、自由だからといって何でも認められるわけではありません。
民法は、「公共の福祉」や「善良な風俗」に反する行為を認めてはいません。
ですから「〇〇を殺せば土地を相続させる」などという遺言はそもそも無効です
遺言のメリット
遺言は、自分の意思を相続人に伝えることができる最良の方法です。
満15歳以上なら誰でも遺言ができます。
ただし、法律で定めた一定の方式が必要になり、 有効な遺言書がないと相続人の力関係や利害が対立し、相続争いになりかねません。遺言をするメリットは大きく分けて2つあります。
- 自分の思い通りに財産の処分ができる
遺言を残しておかないと、法定相続分や相続人間の話し合いによって相続され、自分の意思が反映されません。
- 死後に紛争を残さないよう、対策を施すことができる
遺産分割の処理方法などを明確に示すことによって、余計な争いを未然に防ぐことができます。
また、生前になされると、紛争が生じてしまうような事項については、遺言しておくことが必要です。
経験上、仲の良い兄弟、親戚であっても残念ながら【相続】ではなく【争族】に発展、若しくはシコリを残す形となり決着となるパターンをいくつか見て参りました。
「うちの家族に限って」とお思いの方は、
「まさか」が、現実に起り得ります。ご自身の遺言さえあればこの様な紛争は避けられる可能性が高まります。
自筆証書遺言
必要事項を全文自筆で書く遺言書です。遺言者が自分で遺言の内容の全文、日付および氏名を書き、押印をして作る遺言方法です。
公正証書遺言
公証人役場において公証人が作成する安全で確実な遺言書です。
法改正によって、聴覚や言語に障害がある方も手話通訳や筆談によって公正証書遺言を残すことができるようになりました。(民法969条の2)
秘密証書遺言
遺言の内容を秘密にする遺言書です。遺言書を秘密に保管するために、封がなされた遺言書の封筒の中に、遺言書が入っていることを公正証書の手続きで証明する遺言方法です。
こちらも、公正証書遺言同様、聴覚や言語に障害がある方に対する配慮がなされています。
この手続も公証人役場で行います。
普通方式遺言のメリット・デメリット
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メリット(長所) |
デメリット(短所) |
自筆証書遺言 |
- いつでもどこでも簡単に作成できます
- 遺言をしたことを秘密にしておけます
- 費用がほとんどかかりません
- 何回でも書き直すことができます
- 遺言者が一人で作成することができます
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- 遺言書を紛失したり、発見されないことがあります
- 第三者によって変造・偽造される恐れがあります
- 遺言書が発見されたとき、検認手続きが必要です
- 遺言書が無効になる恐れがあります
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公正証書遺言 |
- 専門家である公証人が作成してくれます
- 保管が確実で安全です
- 文字の書けない人も遺言できます
- 証拠力に優れています
- 検認手続きが不要です
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- 遺言書の作成と内容を第三者に知られます
- 費用と手間がかかります
- 証人二人が必要です
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秘密証書遺言 |
- 遺言書の内容の秘密を守れます
- 代筆、ワ−プロで書いても構いません
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- 作成に若干の費用と手間がかかります
- 検認手続きが必要です
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これら普通方式遺言の他に、死期が差し迫っている危急の場合とか、伝染病で隔離入院されたり、船舶で航海している隔離者の場合に使用される特別方式遺言もありますが、ここでは一般に行われる普通方式遺言についてのみ取り上げています。
証人になれない人
- ・未成年者
- ・推定相続人(遺言者が亡くなるまでは相続人は推定ということになります)、受遺者(遺贈を受ける人)および配偶者ならびに直系血族(直系尊属…父母・祖父母・曾祖父母・玄祖父母 直系卑属…子・孫・曾孫・玄孫)
- ・公証人の配偶者、四親等内の親族、書記および雇い人
上記の「遺言とは」でご説明したように自分の財産を誰にどう継がせたいか、生前に意思表示しておく行為でしたね。
では、なぜ自分の意思を表示しておきたいのか、その目的を整理しておくことが大切です。
大半の人が遺言を残す理由には次のようなものが見受けられます。
- 大切な親族の生計基盤として財産を継がせたい。
- 先祖から受け継いだ財産を子孫に継承したい。
- お世話になった特別な人に報いたい。
- 親族間でもめ事を起こしてほしくない。
- 社会に貢献したい。
いずれももっともな理由ですから、遺言作成のサポートをする側としても大いに力が入ります。
この理由を明確にする時点で最初に確認しておきたいのは、親族構成(既に亡くなっている方を含めた簡単な家系図が作れる程度)と、自分の意思でできるだけ相続をさせたくない人がいるかどうかです。
しかし、遺言書と呼ばれる形式にどうしても抵抗が生じる事もありますので、当事務所では遺言作成の前にご希望であれば「エンディングノート」をご用意いたします。
日記風デザインの問いにお答えいただく簡単なものですが、まずはこちらに概略として記入してみる事もご自身が思っていた事を確認する上でよろしいかと思われます。
相続発生前に被相続人様(お亡くなりになられた方)とお話をさせて頂き、「他は揉めても、私の家族は大丈夫です」
と仰っており、相続発生後に、「〜さんは〇〇には財産を継がせたくないと言ってた」などご子息様から異議を唱える場合、ご子息様の配偶者からの指示がある場合など相続をめぐるトラブルが発生していることも事実です。
実際に遺言書を作成する前に、じっくりと自分の気持ちや財産状況を見つめなおしてみると、案外、自分の本当の気持ちはイメージしたものと違ってたりすることも稀にあります。